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東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)15号 判決 1963年2月28日

原告 塩沢一男

被告 株式会社吉田製作所

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一請求の趣旨および原因

原告は、特許庁が昭和三四年審判第六二四号事件について昭和三六年一月二三日にした審決を取り消す、訴訟費用は被告の負担とする、との判決を求め、請求の原因として次のとおり主張した。

一、原告は、登録第四七八九七六号実用新案「紫外線殺菌器」の権利者であるところ、被告は、昭和三四年一二月一日、原告を被請求人として、別紙記載のとおりの(イ)号図面および説明書に示すユニツトは原告の前記実用新案の権利範囲に属しない、との実用新案の権利範囲確認審判を請求し、特許庁は同年審判第六二四号として審理の結果、昭和三六年一月二三日に、被告の請求どおり、(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトは登録第四七八九七六号実用新案の権利範囲に属しない、との審決をし、原告は同年二月一日にその審決の謄本の送達を受けた。

二、原告の前記実用新案の権利の内容は、その実用新案公報の登録請求の範囲に記載してあるとおり、「扉1、1′を具えた器具類収容戸棚2内に紫外線殺菌灯3と蛍光灯4とを装置し該両灯と電源とを接続する電気回路中に殺菌灯と蛍光灯との回路を交互に切換える自働開閉器5を設け之を扉1が圧着する戸棚の縁枠適所に装置してなる紫外線殺菌器の構造」である点に存する。

三、審決は、はじめに「本件は、実用新案法施行法第二一条第二項の規定により、なお従前の例によつて実理する。」と前置したうえ、本件実用新案の考案の要旨と(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトとを対比して、後者は前者の必須要件を具備していないばかりでなく、両者は構成及び作用効果を異にする異別の型であると認め、かつ「被請求人(原告)の提出にかかる乙第一号証(後出、本件の甲第四号証)の通達書には以上の判断を覆す理由がない。」とし、したがつて、(イ)号図面および説明書に示すユニツトは本件実用新案の権利範囲に属しないものと認めたものである。

四、右審決には、次のような違法の点があつて、取消をまぬかれない。

(一)  本件審判は、審決も説示するとおり、実用新案法施行法第二一条第一項の規定により、なお従前の例により実理されるのであるから、旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号、以下同じ。)が適用されるものであるところ、本件は、同法第二二条第三項に違反し、次に説明するように右審判を請求することのできる利害関係人の資格をそなえない被告の請求にかかるものであつて、これにもとづいてなされた本件審決は違法である。

1 被告代理人弁理士土井健一は、昭和三四年一〇月二三日、被告の本件実用新案権侵害に関連する係争事件の一である後記東京地方裁判所昭和三四年(ヨ)第四三八八号仮処分申請事件につき、担当裁判官および訴訟関係人が立ち会つて、同裁判所裏公道上において、当事者双方の製品を見分中、これも関連係争事件で、同弁理士が被告の代理人として申し立てた特許庁の後記昭和三三年審判第四六一号事件につき昭和三四年八月二五日になされた審決に言及して、「特許庁の審決なんか、なんら効力がない。」と放言した。そこで原告は同弁理士に対し、昭和三四年一〇月二四日附通達書(本件甲第四号証)をもつて、その責任を追求し、かつ本件審判の段階においても、その通達書を乙第一号証として提出した次第である。

この事実によつてみれば、同弁理士によつて代理される被告は特許庁の審決になんらの効力を認めないものであつて、かようなものは特許庁に対し本件実用新案の権利範囲の確認審判を求めるにつき、旧実用新案法の要求する利害関係人たることの資格を有しないものといわなくてはならない。

2 本件(イ)号図面および説明書に示すユニツトは、被告において製作していない架空の製品であり、被告はかようなものについて本件権利範囲確認審判を求め得べき、なんらの利害関係を有しない。その事由は次のとおりである。

被告は、原告の本件実用新案権を侵害する歯科治療用シルバー・ユニツト(甲第八号証はそのカタログ)を製作販売していたので、原告は、昭和三四年七月二七日、東京地方裁判所に対し同年(ヨ)第四三八八号をもつて、右侵害禁止の仮処分を申請し、同年一一月一八日右仮処分は決定され、同月二五日に執行された。しかるに被告代理人は右仮処分の効力をくぐるために本件(イ)号図面および説明書を机上に作り上げ、被告は事実上製作の事実も意思もないのに、同年一二月一日本件権利範囲確認審判を請求した。そして、なお前記侵害行為を継続するので、原告はさらに東京地方裁判所に昭和三五年(ヨ)第三一七八号の仮処分を申請し、昭和三六年一月三〇日、再度の仮処分決定を得て、同年二月一日その執行に及んだのである。被告は右再度の仮処分執行に際し、本件(イ)号図面および説明書に示す製品の存在を主張したが、事実上さような製品は実在せず、原告の実用新案権を侵害するシルバー・ユニツトの製品のみであつたため、右仮処分は執行されたものである。

かかる次第で、本件(イ)号図面および説明書に示すユニツトなるものは、被告の仮処分違反を隠蔽するための架空の製品であることは明らかであり、被告は本件権利範囲確認審判を請求する利害関係を有しないものといわなくてはならない。

3 なお、被告が、原告は本件確認審判において利害関係の点についてなんら抗弁していない、と主張していることも、事実に反する。

(二)  反面、原告も(イ)号図面および説明書に示すような架空の製品について、それが本件実用新案の権利範囲に属するとされようが、属しないとされようが、なんらの痛痒を感じないものである。したがつて、原告を被請求人として本件権利範囲確認審判を求めることは、その利益がないというべく、この理由によつても、本件審決は違法であるといわなくてはならない。

(三)  仮に本件(イ)号図面および説明書に示すユニツトが実在するとすれば、それは被告が甲第八号証のカタログによつて製作販売しているシルバー・ユニツト以外の何物でもないというべく、そして右製品について、被告はすでに原告を被請求人として昭和三三年審判第四六一号実用新案の権利範囲確認審判を請求し、特許庁は昭和三四年八月二五日附で、同事件の(イ)号図面および説明書に示されたシルバー・ユニツトと称する歯科用医療機械の治療装置の消毒室は、本件登録第四七八九七六号実用新案の構成要素をほとんど具備しているから、前者は後者の権利範囲に属する、との理由で、請求人の申立は成り立たない、との審決(甲第九号証はその謄本、甲第七号証は同審判事件の(イ)号図面である。)をしたから、被告がこれと同一物件について、重ねて本件確認審判の請求をすることは、旧実用新案法第二六条によつて準用される旧特許法(大正一〇年法律第九六号)第一一七条の定める一事不再理の法則に違反し、右請求を容れた本件審決は、この理由によつても違法である。

よつて、本件審決の取消を求める。

第二被告の答弁

被告訴訟代理人は、主文どおりの判決を求め、次のとおり答弁した。

一、原告主張事実中、原告がその主張の登録実用新案の権利者であるところ、被告から原告主張のとおりの実用新案の権利範囲確認の審判を請求し、原告主張の経過で、別紙記載の(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトは前記実用新案の権利範囲に属しない、との審決がされ、その謄本が原告主張の日原告に送達されたこと、原告の右実用新案の権利の内容および右審決の理由がいずれも原告主張のとおりであることは争わないが、右審決を違法であるとして原告の主張する諸点については、争う。

二、原告は、被告は本件審判を請求することのできる利害関係人でない、と主張するが、元来右審判事件が生起したのは、原告から被告に対して、被告がシルバー・ユニツトの名称のもとに製作販売していた歯科治療用機械は原告の本件登録実用新案にかかる殺菌器に類似し、したがつて右実用新案権の侵害を構成すると主張して、東京地方裁判所に当該物品の製作販売禁止の仮処分を申請したことに基因する。

旧実用新案法第二二条第三項の法意は、権利者からその権利の侵害と目される行為をしているものに対して権利範囲確認審判を請求することができることは、もちろん、権利者からその権利の対抗を受け、あるいは対抗を受ける危険のある、同種物品製作の機械設備等を有するものも亦、右審判請求をするについての利害関係人に該当するとするものであつて、被告が本件審判請求をすることのできる利害関係人に該当することは、いうまでもない。

三、1 原告から被告代理人にあてて、その主張のような通達書(審判事件の乙第一号証、本件の甲第四号証)が送達されてきたことは認めるが、右通達書記載の事実に関する原告の主張は誤解にもとづくものである。すなわち、昭和三四年一〇月二三日原告主張の仮処分申請事件の係争物件の実地見分の際、原告が特許庁の初審の審決を取り上げ、これをもつて最終最高のものであるかのように強調したので、被告代理人は、この審決の当否は、抗告審判、東京高裁、さらには最高裁にまでかかり得るものであつて、特許庁の初審の審決があつたに過ぎない現段階では最終的に確定したものではないから、この審決は絶対的効力を発生したものとは云えない、との啓蒙的発言をしただけのことである。したがつて、被告代理人のこの発言をもつて、被告が本件審判請求をするについての利害関係を有しないとするがごときは、事実の認識を誤つたものといわなくてはならない。

2 原告は、本件(イ)号図面および説明書に示すユニツトは被告において製作していない架空の製品であるから、被告は本件審判請求をするにつき利害関係を有しない、とも主張する。

しかし、本件事案の経過は次のとおりである。

被告が製造販売していたユニツト(名称シルバー・ユニツト)につき、原告からその主張の仮処分の申請(東京地方裁判所昭和三四年(ヨ)第四三八八号)があつたので、被告は当該ユニツトを(イ)号図面および説明書に示す構造のものに改良して製作、販売すると同時に、特許庁に対し本件実用新案の権利範囲確認審判の請求をした。しかるに、昭和三四年一一月二五日右仮処分の執行をした執行吏は、現場に臨み、改良前および改良後のものについても執行しようとしたので、被告は改良後のものは全然相違する旨、抗弁したが、執行吏はこれを聞き入れることなく執行した。そこで、同年一二月二日被告から執行方法に対する異議の申立をし、同月二八日、右申立は認容されたところ、原告は昭和三五年一月八日右決定に対して即時抗告を申し立て、その結果、同年一〇月二五日東京高等裁判所において、半製品についての執行は違法であるが、その他のものについての執行は正当であるとの決定がなされて今日にいたつている。

かようなわけで、被告が本件実用新案の権利範囲確認審判を請求するについて利害関係をすることは、明白である。

3 仮に被告が原告からその権利の対抗を受けたことがないとしても、被告が現実に製作販売しているユニツトが本件実用新案権に牴触するおそれがあつて、後日問題を生起しては困ると考えたときには、その権利に対して権利範囲の確認審判の請求をなし得ることは、旧実用新案法第二二条第三項の法意からして疑う余地がない。そのことは、原告の思わくや意図によつて左右されるものでなく、いわんや原告は本件確認審判において、この点についてなんら抗弁していないのである。

4 旧実用新案法第二二条第三項に規定する利害関係人とは、消極的な権利範囲確認審判を請求するものが、その対象とする物または製造法を現実に実施していることを要件とするものではなく、その実施の設備を有し、または将来その物を製作または販売する意志のあるものは、当然前記審判請求の利害関係人に該当するのであつて、そのことは過去の審決、判決例のあげて支持するところである。

故に被告が(イ)号図面およびその説明書に示すシルバー・ユニツトと称する歯科用医療機械の装置を製作、販売するに先立つて、それが原告の本件登録実用新案の権利範囲に属するや否やの判断を求むべく、特許庁に対し権利範囲の確認の審判を請求することは、明らかに前記旧実用新案法第二二条第三項に規定する利害関係人に該当するといわなくてはならない。

5 なお、原告主張の昭和三三年審判第四六一号事件審決に対しては、被告から昭和三四年一〇月一三日に不服の抗告審判を請求したところ、同年抗告審判第二四九二号として審理の結果、昭和三七年一月二〇日、「原審決を破毀する。(イ)号図面書およびその説明書に記載するユニツトは登録第四七八九七六号実用新案の権利範囲に属しない。」との審決がされ、これに対して原告は東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起し、該事件は昭和三七年(行ナ)第三二号として、同庁に係属している。

以上のとおり、原告の請求はいずれにしても理由がないといわなくてはならない。

第三証拠<省略>

理由

一、原告は登録第四七八九七六号実用新案「紫外線殺菌器」の権利者であるところ、被告から原告主張のとおり右実用新案の権利範囲確認審判の請求があり、昭和三四年審判第六二四号として、昭和三六年一月二三日に、別紙記載の(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトは前記実用新案の権利範囲に属しない、との審決がされ、その謄本が原告主張の日原告に送達されたこと、原告の右実用新案の権利の内容および右審決の理由が原告主張のとおりであることについては、当事者間に争がない。

二、前記権利範囲確認審判は、新法施行の際現に係属していたので、実用新案法施行法第二一条第二項によつて、なお従前の例によつて審理、審決さるべきものであるところ、原告は、被告は右審判を請求するにつき旧実用新案法第二二条第三項に規定する利害関係人であることの資格をそなえていない、と主張するので、この点について考える。

成立に争のない甲第一号証、第五ないし第九号証、乙第一号証の一ないし四、第二号証の一、二、第三、四、五号証、弁論の全趣旨により成立を認め得べき乙第二号証の三ないし六に本件弁論の全趣旨をあわせ考えるときは、次の事実を認めることができる。

被告は、シルバー・ユニツトなる名称を附した歯科治療用機械を製造販売していたところ、昭和三三年九月一日ごろ、原告から右治療機械に内蔵する殺菌器は原告の本件実用新案権を侵害している旨の警告を受けた。そこで、被告は、原告を被請求人として、特許庁に対し、右ユニツトの消毒室を(イ)号図面およびその説明書をもつて示したうえ、右消毒室は本件実用新案の権利範囲に属しない旨の実用新案の権利範囲確認審判を請求したところ、昭和三三年審判第四六一号として審理の結果、昭和三四年八月二五日、被告の右申立は成り立たない、旨の審決があつた。そこで、被告は右審決に不服の抗告審判を請求したことはもちろんであるが、なお被告の主張が容れられず、シルバー・ユニツトの製造販売が原告の本件実用新案権の侵害として禁止される結果となることを危ぶみ、その場合にそなえて、シルバー・ユニツトの構造中、前記審決において原告の実用新案の構成要素に包含されるものと認められた部分、すなわち殺菌灯と螢光灯との回路を交互に切換える自動開閉器を扉が圧着する戸棚の枠の適所に設置し、これによつて扉の開閉により自動的に殺菌灯と螢光灯とを交互に点滅するように構成した点を変更して、螢光灯の点滅回路を独立した手動の別個の回路とし、したがつて扉の開閉によつて自動的に操作されえないものとした、別紙記載の(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトを考案し、従来のシルバー・ユニツトの製造販売を継続できないようになつたときは、これに代えて右考案のユニツトを製造販売することを企画した。しかし、なお右考案のユニツトが原告の本件実用新案権にふれないことを確認する目的をもつて、本件昭和三四年審判第六二四号の実用新案の権利範囲確認審判を請求したものである。

以上のとおり認めることができる。被告は現実に本件(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトを製作したと主張し、前記乙第三号証(東京地方裁判所昭和三四年(ヲ)第三一四八号執行方法に関する異議決定写)には、原告が被告に対する東京地方裁判所昭和三四年(ヨ)第四三八八号仮処分決定にもとづいて昭和三四年一一月二五日に仮処分を執行した物件中シルバー・ユニツト完成品一〇台は、殺菌灯と螢光灯とを自動的に切り換える装置を有せず、ユニツトの胴体の横にある手動型スイツチを手動して螢光灯を点滅するようにしたものである旨の記載があるが、前記同第五号証(東京高等裁判所昭和三五年(フ)第四号前記東京地方裁判所の決定に対する即時抗告にかゝる決定正本)によれば、原告は前記仮処分物件の構造は、仮処分執行後に加工改装したものであると主張していることが認められ、これらの点を斟酌すれば、前記書証の記載の程度のみでは、被告の主張事実を認めるには十分でないとするのが相当である。

しかし、右のように被告が現実に本件(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトの製作に着手した事実が認められないにしても、前記認定の状況のもとに、被告が製造販売の意図をもつて本件(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトを考案したことは、被告はこれについて本件権利範囲確認審判を請求することのできる利害関係人であるというに足りるものといわなくてはならない。

三、1.原告は被告代理人の審決の効力に関する見解の表明をもつて、被告の本件審判請求の利害関係を否定する事由として主張するが、被告代理人が原告の主張するように特許庁の審決にはなんらの効力がない旨極言した事実はこれを明認するに足る証拠がなく、また旧法上審決に対し、被告代理人の表明した見解であると主張するとおりの不服申立の方法があることは明らかなことであり、さればといつて審判請求の利益のあることは否定することができないから、原告の右主張はとうていこれを採用することができない。

2.また、本件(イ)号図面およびその説明書に示すユニツトを現実に被告において製作したことがないとしても、前記認定のような事情のもとに被告がその製造販売の意図を有する以上、右計画実行にさきだつて、それが原告の実用新案権を侵害しないことの確認を得て、安んじてその生産に着手したいと考えることは、万一の損失をおそれる経済人として当然の措置であるから、単にその製品がまだ生産されていないからといつて、被告をもつて本件確認審判を求めることができる利害関係人でないとすることはできない。

四、原告はさらに本件(イ)号の物件に関する権利範囲確認には何らの関心がなく、したがつて本件審判請求の利益がない、と主張するが、被告においてその確認を求める必要のあることは前段認定のとおりであるから、本件実用新案権者である原告を相手どつて、右確認審判を請求する利益がないとすることはできない。

五、最後に原告が本件審判請求は一事不再理の原則に反すると主張する点についても、原告主張の昭和三三年審判第四六一号事件の(イ)号の物件と本件の昭和三四年審判第六二四号事件のそれとが別異のものであることは、前示認定に徴して明白であるから、原告の右主張も亦理由がないといわなくてはならない。

六、以上の理由によつて本件審決の取消を求める原告の請求を棄却すべきものと認め、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 関根小郷 入山実 荒木秀一)

(別紙)

(イ)号図面<省略>

(イ)号図面の説明書

図面はユニツトを示すもので、第一図は一部を省略した斜面図、第二図は該頭部の縦断側面図、第三図は蛍光灯及殺菌灯を点滅する電気回路図である。

図面に示すように本件(1)の頭部前面に窓(2)及開閉口(3)を形成せしめ該窓(2)に乳色のフイルム透視板(4)を表設し、且開閉口(3)にスプレーシリンヂ等の治療器(5)を支持する支持板(6)(6)′を内方に突設した開閉蓋(7)の下縁を蝶着(8)すると共に支持板(6)の背部に覆板(9)を取付け、更に本件(1)の頭部内部にフイルム透視板(4)の背後に位置する該透視板(4)のみを照明する蛍光灯(10)及該蛍光光線を透視板(4)に差し向ける為の反射板(17)を、又治療器(3)を照射する殺菌灯(11)及該殺菌光線を治療器(3)にのみ差し向ける為の反射板(18)を夫々装置せしめ、且本体(1)の内部に殺菌灯(11)の点滅用マイクロスイツチ(12)、蛍光灯(10)の点滅用手動スイツチ(13)、殺菌灯用のグローランプ(14)とチヨークコイル(15)及蛍光灯用のグローランプ(14)′とチヨークコイル(15)′を夫々取付け、之等を第三図に示す如く電気的に接続している。即ち蛍光灯(10)、グローランプ(14)、チヨークコイル(15)及手動スイツチ(13)によつて構成する蛍光灯(10)の点滅回路(A)と殺菌灯(11)、グローランプ(14)′チヨークコイル(15)′及マイクロスイツチ(12)によつて構成する殺菌灯の点滅回路(B)とを個々に形成し、殺菌灯(11)に於いて開閉蓋(5)が開いたとき支持板(6)′の下側に設けた操作片(16)がマイクロスイツチ(12)との接触が解かれ殺菌灯(11)を消灯し、蓋(5)が閉ぢたとき前記操作片(16)がマイクロスイツチ(12)を作動して殺菌灯を点灯し、且他方蛍光灯(10)に於いては、上記マイクロスイツチ(12)に全然関係なく殺菌灯の点滅にかかわらずフイルムを透視しようとする時に任意に手動スイツチ(13)を手で開閉することにより蛍光灯を自由に点滅し得るように構成してある。

而して開閉蓋(5)の開披により殺菌灯(11)の回路が開き殺菌灯(11)を消灯する。この状態に於いて開閉蓋(5)と共に治療器(5)は本体(1)の前面に突出し同時に覆板(9)によつて開閉口(3)は完全に遮蔽される。又開閉蓋(5)の閉鎖により殺菌灯(11)の回路が閉じ之を点灯し治療器(3)を照射するものである。

従つて開閉蓋(5)の開披時又は閉鎖時に蛍光灯(10)を点灯しても蛍光光線は全然外部に漏洩することなくフイルム透視板(4)をその背面から照明する。

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